LOGIN「……はぁっ…はぁっ…っとに、先輩っ。碌な事しねぇな、マジでっ」 心の底から同感ー。 二層に戻ったものの、今何か起きたり襲われたら直ぐに対処なんて出来ないだろうという事でオレ達は一旦地上へと戻り、地面にへたり込んだ。 「あー…今日は調査止めて帰ろっかなー」 万全な状態で挑まないと危険以外の何物でもないし、何より小次郎は別として、もう一人の忍者の先輩、略して忍先が邪魔過ぎる。 「俺っち達もそうした方が良さそうっスねー……って、何だこれ?」 「あ?」 小次郎がオレに向かって振っていた手を止めた。 しかもその手を凝視している。一体何を見ているんだ? オレがその手の甲を見ようとしたら、小次郎が今度はオレの手を指さし、 「大地さんの手にもあるっスよ?」 言ってきた。 無意識に手を上げて、その甲を見ると何か良く解らない文様がある。小さな記号や文字があるが…単体で見ると意味が解らないが遠目で見ると、これは…。 「時計、か?」 「時計っスね」 …なんで時計? オレと小次郎が再び自分の手を見て一時停止。 何でかって? この時計の針。秒針…動いてる。手の甲にある文様が動いてる。 「気持ち悪っ!?」 「自分の意思に関係なく手の甲の表面が動くとか気持ち悪っ!!」 小次郎の言ってる通り、まるで時計が体に埋め込まれたみたいな感じで。兎に角気持ち悪い。 でもさっきも思ったけど何で時計? 鏡がある訳じゃないから、オレは同じ状況にある小次郎を観察する。 すると首とどうやら手の平にも時計ではないが文様が…。 「これって、さっきのアイツが付けたって事か?」 「…って事は、これ、呪いっスかっ?」 「…それは間違いなさそうだけどー…苦しむがいいって言ってたよな?」 「言ってたっスね」 「の割に全く痛くも痒くもないよな?」 「ないっスね。しいて言うなら気持ち悪いってだけで」 確かに気持ち悪いが、そんな気分だけの呪いってどうなんだ? これだって気にしなければ大して気にもならない。 だけどあいつは、オレ達に呪いをかけた奴は何て言っていた?『……呪イ…。宝、命吸収、……苦シムガ良イ…』「呪い。宝、命吸収、って言ってたっスよね?」 同じ事を考えていたのか、小次郎が言葉にしたのでそれに頷く。 宝の命…? 「『宝の命』と言う言葉をそのまま捉える
―――数時間前。姫ちゃんに見送られ、オレは今日も姫ちゃん特製のお弁当を持って、洞窟の探索へと向かった。 姫ちゃんのあの不服そうな?不満そうな?顔を思い出すとついつい笑ってしまう。何でかって?可愛いからに決まってる。 そんなにオレが心配なのかなー?とか思うとマジやばい。テンション上がる。アクセル踏み込んでいいか?駄目だよなー。 順調に車を走らせて、洞窟前に辿り着く。前回と同じく車を止めて、早速中へと潜る。 一層も前回二層もクリアした。 今日は三層に進む。 これまで通りなら恐らく問題ないと思う。 敵も遭遇しても軒並み倒して来てるしな。 真っ暗だった二層も前回ボスキャラを倒した時に明るくなった時のままであっさりと三層への入り口である梯子を見つけた。 って言うか、ここ。三層の入り口の穴。前回の戦闘中ここにあるって知らなかったから、下手してたら落ちてたかもねー。まぁ、落ちても怪我はしないだろうけどー。 カンカンと音を立てて梯子を降りる。 お?明るい? 二層と同じく石が光ってるっぽいけど…それだけじゃない?奥の方で何かがビカビカ光ってる。 警戒してはいるけど、スピードを緩めることなく足を進めると、その光っている物が何か素直に納得した。 「おー…ここが金銀財宝の山って事かー」 思いの外、近かったなー。財宝置き場。 本物かどうか、確かめるか? あー…でもなぁ。罠って可能性が高いっつーか、多分罠だよなー。 一歩近付く毎に首筋の辺りがチリチリしてくる。絶対に何かある。 下手に近づかない方がいいな。 敢えて懐中電灯で周りを照らす。金銀財宝を避けて周囲を確認する。すると何もない真っ暗闇の方に下へ行く梯子を見つけた。あっちに行けば四層か。 オレは財宝に特に興味はないし。まずオレが確かめるべきは姫ちゃんが安全に進めるかどうかだし。三層が財宝エリアって事は、恐らく呪いはここでかけられたと考えても良い。 となると解呪方法はあるとしたら更に最深部だな。何でそう思うかって?RPGの鉄則っしょー。ボスと秘宝は最深部って。 四層に行く梯子に足をかけた所で、 「………だっ?」 話し声が聞こえた。 一体誰だ? 相手の姿を確かめる為に、梯子をもう少し降りて姿を隠して待機する。 オレはあちらの気配に気付いたけど、むこうは全くオレの存在に気付いていないらし
「じゃあ、行ってくるからー」 「……いってらっしゃーい」 じとー…。 大地お兄ちゃんを見送りつつ、「ずるい」「心配」「不安」と様々な感情を込めて見つめてると、大地お兄ちゃんに苦笑されて頭を撫でられた。 うぅ…。情けない。 何でだろう。鴇お兄ちゃんや御三家のお兄ちゃん達といると、自分が滅茶苦茶子供に思えて情けなくなるのは…。 精神的にはずっと年上なのになぁ…。 家を出て行った大地お兄ちゃんのトラックが敷地を出て行くのを見送って、私はとぼとぼと別荘の中に戻った。 リビングに戻ると、そこには透馬お兄ちゃんがコルクボードに貼られた地図を真剣な眼差しで考察している姿があった。 奏輔お兄ちゃんと近江くん、そして愛奈は大地お兄ちゃんより先に情報収集に出掛けて、華菜ちゃんは寝室で何やら別ルートで情報を集めている。 …何か、私だけ何もしてないんじゃ…? 確かに守られる立場にいるけどさ。何もしないのは違うじゃん? かと言って不用意に外に出たら、迷惑になる。…ふみぃ~…役立たずじゃ~ん…。 自分の足手まといっぷりに、落ち込みながら透馬お兄ちゃんの横を通り過ぎようとすると。 「ん?姫?、どうした?しょんぼりして」 「透馬お兄ちゃん…だって、私があまりにも足手まといの役立たずだから~…」 「は?いや、そんなことないだろ。俺達のモチベは姫の存在にあるんだぞ?」 「そんなの気休めだー」 「いやいや。んなことねーって」 「ふみぃ~…」 透馬お兄ちゃんは私の拗ねっぷりに、大地お兄ちゃんと同じような苦笑いを浮かべて私の頭をわしわしと撫でた。 「じゃあ姫。俺の気分転換に付き合ってくれよ。少しお喋りしようぜ。茶と菓子用意してくれよ。今なら俺達が小さい頃の話をしてやろう」 「えっ!?いいのっ!?ま、待っててっ!!直ぐ用意するからっ!!」 お兄ちゃん達の小さい頃のお話っ!これは聞かない訳にはいかないっ! 秒で準備を済ませて、ソファで座る透馬お兄ちゃんのテーブルに紅茶と特製パウンドケーキを置いて、反対側のソファに座った。 「恐ろしく速いな…」 「透馬お兄ちゃんっ、早くっ、早くっ」 わくわく。 正座で待機している私を見て、小さく笑って、透馬お兄ちゃんは話し出した。 「あー、どっから話していいもんか。そうだな、まずは出会いからか?」 どんな子供時代だった
調査を開始して3日が経過した。 洞窟内の調査は大分進んだと思う。 マップを見ても、行ける場所は大体行った。何度か戦闘にもなったが、まぁあのクラスなら問題ない。佳織さんのが余程強い。 で、今オレは何をしているかと言うと。 「このままで終わる訳ないと思ってたけど、まさかまた梯子があるとはねー」 洞窟の最奥でまた下へ進む梯子を発見したのだ。 見つけ辛い事に、土に隠されて簡単に発見出来なくされていた。けど歩いていきなり、足下に空間の様な違和感を感じたら嫌でも気付く。 足で土を避けてみたら案の定マンホールみたいな蓋があって、それを蹴ってみたら梯子があって今に至る、と。 んー…今何時だ? 時計を見ると、今午後3時。少し様子見位は出来るか? いや、こっから戻る時間を考えると…無理だな。 けどなぁ…。 今日別荘出る時。 『大地お兄ちゃん。…何か、怪しい…』 って姫ちゃん言ってたっけ。そろそろ隠すのも限界なんだよねー。だったらいっそ、ばらしてしまって、オレが調べて安全って解ってる所から調査をさせた方がいいか。 となると、もう少し調査をして態と遅れて帰るか。 そうと決まれば、梯子を降りよう。 カンカンと音を鳴らしながら、降りて行くと。 お決まりの真っ暗闇。 けど最初の時と違うのは、何かが蠢く音がそこかしこからする事。 暗闇で動くモノ、かー。 特に恐怖はないので、懐中電灯で先を照らしてみる。すると、そこには歩く骸骨が。 「えっとー…こーゆーのはあれだ。…そうスケルトンって奴だなっ」 ゲームとかでは騎士だったり、侍だったりの恰好をしてるもんだけど、こいつらは忍びの恰好をしている。 要するに死ぬ前は忍びだった連中って事だ。 さて、強さはどんなもんかな? スケルトンの倒し方…結構効かない攻撃が多いって言うよな。確実なのは浄化系の魔法やスキル。…オレは何持ってたっけ? 特にそれらしいスキル持ってないよなー。あ、そういや回復スキル持ってたっけー? ……スキル『手当て』。簡単な手当てをする事が出来る。アイテム救急箱が必要。…うん、意味ねーなー。 はぁ。仕方ない。殴るか。 いつの間にかじりじりと迫って来ているスケルトン。囲まれる前に倒す必要がある。 一先ず足下にある石を拾って、目の前のスケルトンの頭蓋骨に向かって投げつけた。 ガシャンッ
洞窟の中。一歩一歩と慎重に進む…のは流石に面倒なのでズカズカと奥へ進んで行く。 気になる所は調査しつつ進もうと思うんだけど、特に怪しい所は見つからない。 今の所普通の洞窟だ。 …入口が梯子な時点で普通ではないけどな。 さて。そうこう考えてる内に結構前へ進んできたが、ここで漸く別れ道らしい。 道は前方方向に三つに分かれている。 一先ず簡単に右斜め方向の道を右、隣を真ん中、左斜め方向を左と考えるとして。 懐中電灯でそれぞれを照らしてみるが、真っ暗で見えない。 これが調査じゃなきゃ適当に石蹴飛ばして石が転がった方向へ行くんだけどな。 何があるか、一通り調べて行かなきゃな。姫ちゃんが怪我するような事は絶対ない様にしないと。 まずは、右に行ってみるか。行き止まりは行き止まりで何かあるかもしれないし。 躊躇せず進む。 特に怪しい所はなさそうだ。 強いて言うなら、足下にスイッチ式の罠があること位か。 こんな解りやすく作られてたら、逆に踏みたくなるな。 姫ちゃんが来た時、既に罠が作動されて動かない状態にしといた方がいいか?…うん。そうしよう。 カチッ。 罠のスイッチを踏むと、両サイドから矢が飛んできた。 パシパシッ。 音を立てながらも自分に当たりそうな分は掴んで回避。 在り来たりな罠だな。 掴んだ矢をポイッと放って、少し進む。 今度は側面に如何にもなでっぱりの岩がある。 これもどう考えてもスイッチだろ。 ……風が止まった? さっきまであった風の音が消えた。 って事はここは無風状態って事で…。 奥まで進むと、どうやら行き止まりっぽかった。 壁を見る限りスイッチや罠の起動装置はなさそうだ。…と考えると、あのスイッチは空気に混じるタイプの罠だな。毒ガスとか催眠ガスとかそこら辺。 なら、押さずに戻るか。 来た道を引き返し、別れ道まで戻って、今度は真ん中の道へと行こうとして、ピタッと足を止める。 「これからこうやって道が続くとしてー。オレ、道順暗記とか無理ー」 自分の記憶力の残念さは自分が一番知っている。 佳織さんのスパルタがあって、姫ちゃん可愛さに養護教諭になる為の勉強は死ぬ気でしたけれど、おかげで脳味噌にもう余裕がない。 マッピングするか? 紙…とか、持ってくるような人間でもないんだよな、オレ。 持って来たのは懐中
真っ暗な道。軽トラックを走らせる。 今日姫ちゃんに野菜をとって来てと頼まれ畑へ行った時、畑の脇にあった小屋に軽トラックが置いてあった事に気づいたのだ。 幸いガソリンも満タンに入っており、恐らく何かあった時の為に常に姫ちゃんか姫ちゃんの頼んだ誰かがメンテナンスをしていたんだろう。 畑用に用意していたってのは、承知の上だけどねー。 ハンドルを緩く切って、山道をぐねぐねと進む。 何処へ向かっているのか。 それは勿論、皆で話し合って目星をつけた場所だ。 本当なら皆で行くべきなのかもしれない。 だけど、良く考えてみて、 (そんな危険な場所に、姫ちゃんを連れて行ける訳ないだろ) と、オレの中で結論が出た。 何で可愛くて堪らない、ずっと見守ってきた女の子を危険に合わせなきゃいけない? 姫ちゃんは女の子だ。か弱い女の子なんだ。可愛くて堪らない女の子なんだ。むしろ天使っ!姫と言うより天使っ!女神でも良いかっ!?いやっ、女神は色々複雑だからやっぱり天使だっ! 脳内、姫ちゃん祭り。 そんな祭りを開催していたら、気付いたら管理地に到着していた。 トラックから降りて、まじまじと観察してみる。 管理地ってどんな場所かと思ってたら、洞窟?いや、洞窟とは違うか? 大きな岩壁の一部が鉄のドアになっており、そこには藤の花の房が九つ、描かれていた。 「わっかりやっすーい。どっからどう見ても裏門の管理地じゃねぇーか」 さて、どうするか。 ここで素直にドアを開けるのは馬鹿のする事だろ。 表門の連中はきっとここを見つけただけでテンション上がって、何も考えずにドアに触れて開けたんだろうな。 …まずは様子見、か。 足下にある小枝を上方へ蹴り上げて、キャッチするとそれをある程度力を込めてドアに向かって投げつける。バチッ!目に見えない何かに弾かれた。結界か? それともあれに触れると、表門の連中の子みたいになる呪いか何かがある、か? 何か、あれを発動させる装置か何かあんじゃねぇの? ドアに触れないギリギリの位置まで近寄って、周囲を確認する。 特にそれらしき装置はな…い? 装置はなかったが、ドアの横。岩壁の前。何か不自然に盛り上がってる土があるんだけど。 結界とは関係ない位置にある。 掘ってみるか? 確かトラックにシャベルがあったはずだ。 軽トラックの
それから、襲撃のある8日まで。私は、一日一回はあえて外出し、買い物をするようにした。と言うのも、お兄ちゃん達が、遭遇すると言う形を作りたいと言ったからだ。ゲームにより近づける為なんだって。私としてはお兄ちゃん達だけ危険な目に合わせるつもりは毛頭なかったから、即頷いた。むしろ一日一回で良いのかと聞き返してしまった位だ。けど余計なことをしてもまたお兄ちゃん達の計画を崩すだけだよねとちゃんと思い止まった。買い物をして、華菜ちゃんの家に帰って、華菜ちゃんのご家族の代わりにご飯を作って、パソコンを借りて一日分の仕事をして。これを数日繰り返した。…私、本当にこれでいいのかなぁ…?ちょっと不安に
「…美鈴?」声が聞こえて目を開くと、ママのドアップ。「美鈴。何をぼんやりしているの?早くその本を持って廊下に出てみなさい」そしてまたこのセリフ。私の手にはセーブの本。流石に二度も同じ事があれば、夢でも幻でもないって理解出来る。いや、元々夢の可能性は大分低かったんだけどね。そしてもう一つ、夢を否定するに思い至る理由がある。ここに、いつもママのドアップがあるこの時に戻る理由。こんな事現実的じゃないと思って、つい思考から排除してたんだけど…。でも…もう、そうとしか考えられない。私はやはり『手に持っていた』本を開いた。そこに書いてある文字は、私の文字。『ハートの意味が解らない。
私の視界は真っ暗闇の中。 ふっ。私を舐めないで貰いたいわねっ。 毎度毎度この真っ暗闇を見ていたら、もう分かるもんねっ! ズバリ、私は気を失っているっ!どやぁっ! ……。 ………。 ……………しくしくしく。全くもって威張れたことじゃないのよぅ…しくしくしく。 何で私はまた意識を失ってるのー…。 えっと…、私は何でこうなってるんだっけ?気を失う前は確か…。 確か私は旭と一緒に買い物した帰りに、旭に扮した表門の人に刺されてー…はて? そこから記憶がないと言う事は、私はあそこで気を失ったって事だよね? んで、今現在意識がない、と。そう言う事だよね? でも
※ このお話は本編である『乙女ゲームのヒロインに転生しました。でも私、男性恐怖症なんですけど…』の三十話から続くお話です。まだ本編をお読みで無い方はまずは本編からお楽しみください。「姫。この鎖主体のデザインと、薔薇主体のデザイン、どっちが可愛いと思う?」「んー…、私としては薔薇の方が可愛いと思うんだけどー…、遠目から見てどっちが可愛いと思う?大地お兄ちゃん」「鎖デザインのネックレスと、薔薇デザインのブレスレットー。成程。姫ちゃんが一番可愛いー」「俺もそう思う。姫さんが一番可愛い」「確かに。姫が一番可愛いな」「ちょ、ちょっと三人共っ、デザインの話でしょーっ。私は関係ないでしょーっ。